2022年4月29日金曜日

日本における『アンネの日記』受容とアンネ・フランク像の形成について

えらそーなタイトル付けましたけど、実は何にもわかってません。これってタイトル詐欺?

『アンネの日記』について何回か書いてきましたが、受容史やイメージ形成の経緯に興味を持った最初のきっかけは、2014年に掲載されたハアレツ紙(イスラエルの新聞)の記事です。

以前に書いたように、2014年の2月に東京都内の図書館で『アンネの日記』やその関連書籍が相次いで破られているという報道がありました。その後、アンネ・フランク関連に限らず杉原千畝などホロコーストに関連する書籍全般が被害に遭っていたことがわかりましたが、容疑者は3月に逮捕されました。

その事件が起きていた当時、Twitterなどで関連する情報を眺めていたところ、ハアレツ紙の記事に行き当たったのです。

2022年4月23日土曜日

『悲劇の少女アンネ』と『少女アンネーその足跡』を比較する

アンネ・フランクの話がまだ続きます。今回はエルンスト・シュナーベルによる Anne Frank: Spur eines Kindes の訳書2冊とその内容について。

訳書2冊と書きましたが、厳密には少なくとも4種類発行されています(私が確認したものだけなので、他にもあるかも)。

  • 1958年『アンネのおもかげ』みすず書房
  • 1968年『悲劇の少女アンネ』偕成社 ※新版1991年
  • 1969年『少女アンネの悲しみ』偕成社
  • 1978年『少女アンネ―その足跡』偕成社

2022年4月21日木曜日

2022年切手趣味週間の切手で歌麿と写楽のマキシマムカードを作成

切手趣味週間の切手が発売になりました。最近、記念押印はもっぱら郵頼を利用していたのですが、今回は久々に押印会場に行って来ました!

喜多川歌麿の《ポッピンを吹く娘》と東洲斎写楽の《市川蝦蔵の竹村定之進》のマキシマムカードです。もう1種、鈴木春信の《手毬つき》も入っているのですが、これはポストカードが見つからず、また押印デザインにも採用されていないので作成できませんでした。

昨年は郵便創業150年ということで、明治時代の「郵便取扱の図」「郵便現業絵巻」が選ばれていましたが、今年は「過去の切手趣味週間に採用した浮世絵から3点を選びました」とのこと。なぜ過去の作品からリバイバルなのか、郵便局のサイトでは説明が見つからないのですが…切手趣味週間75周年(1947年開始)だからですか?

 ■ 切手趣味週間

《ポッピンを吹く娘》*は1955年、《市川蝦蔵の竹村定之進》は1956年、《手毬つき》は1957年に発行された「切手趣味週間」切手なんですね。それぞれ額面は10円。時代を感じますね。

*この作品は昔《ビードロを吹く娘》と呼ばれていて、55年版も名称は「ビードロ」だったみたいです。

《ポッピンを吹く娘》は《寛政三美人》とともに歌麿の人気作品でグッズ率高いですね。また《市川蝦蔵の竹村定之進》は左目が江戸東京博物館のシンボルマークになっていることでも有名。何かコラボできるんじゃ?と思ったら江戸博は改修のため長期休館中でした。残念。

 ■ 江戸東京博物館 - シンボルマーク

春信切手は、また別の機会に使おうと思います。タイトルは《手毬つき》になっていますが、もとは12か月の風俗を描いた揃い物で、羽根つきをする少女とのペアになっている作品をトリミングしたもの。これは、数年前に千葉市美術館の春信展で見たのですが、図録を見てみると「鈴木春重(司馬江漢)の作ではないかとする意見もある」と書いてありました。うーむ……。

出版されたのが春信の亡くなった年であることや、人物表現がやや生硬であることなどからきている意見のようですが……。この作品の真贋はともかく、江漢が贋作をいくつか描いていることは確からしいです。なぜそれがわかったのかというと、「版元に頼まれて贋作描いちゃいました、てへぺろ」と江漢が日記に書いていたからだそう。現代なら刑事事件に発展しかねない事案ですが、当時は問題なかったのでしょうか。これも別のスケールで時代を感じます。

2022年4月15日金曜日

『アンネの日記』に関するWikipedia記述の出典を探す(後編)

前編では、Wikipedia「アンネの日記」に掲載されている話の出典が見つからん!いくら探しても見つからん!という話を書きました。

それがですね、シュナーベル著『悲劇の少女アンネ』のあとがきに、そのままではないですが似たような記述を発見しました。

2022年4月14日木曜日

『アンネの日記』に関するWikipedia記述の出典を探す(前編)

前にご紹介した『アンネ・フランクの密告者』ですが、どうやらオランダでは絶版・回収が決定したとのこと。Amazonで見ると日本語版と英語版は普通に販売されているようです。個人的には絶版・回収よりも反論本を出してほしいなと思いますが…。

それはさておきアンネ・フランクの話、もう少し続きます。

アンネ関連の本をまとめて読んだ時だと思いますが、気になったことがありました。Wikipedia「アンネの日記」にある次のような記述です。

日本語訳の初版が出版された当初のオランダでは、日本がこの本を発行することに対する抵抗が強かった。原因はかつてオランダは、アジアに持っていた植民地であるインドネシアにおいて、大日本帝国と対峙し追い出された上に、かつて大日本帝国がナチス党政権下のナチス・ドイツの同盟国であることが原因と思われる。訳者の1人が、アムステルダムの本屋で、アンネ・フランクについての文献を探していたところ、市民らから「お前たち日本人に、アンネのことが分かってたまるか!」と店から追いだされたり、本屋によっては「日本人にはアンネの本は売れない」と拒否されたという(訳者の一人の「解説」より)。

これを読んで「何か変だな」と思ったのです。こんなこと本当にあったのでしょうか? 「訳者の一人の『解説』より」という書き方も何だかいい加減というか、出典の書き方としてWikipediaの基準をクリアしているとは思えません。

2022年4月10日日曜日

3月に鑑賞した展覧会


2月に鑑賞した展覧会を振り返ったときに「月末までにポンペイ、ミロ展、山種の松園松篁のうち1~2展は見よう」と書いていましたが、結局ポンペイ展は行けませんでした。4月下旬までやっていると思っていたら4月3日までだったのですね!気づいた時にはもう予約枠が埋まっていたのでした…。

赤―色が語る浮世絵の歴史(太田記念美術館)
浮世絵に使われる「赤」には、顔料の種類や使い方によるさまざまな表現があります。合成染料を使った明治時代の「赤絵」は、最初見た時は毒々しいと感じたのですが、見慣れてくると、これはこれで良いんじゃない?とも思うようになりました。

ミケル・バルセロ展(東京オペラシティアートギャラリー)
キャンバスをたわませ、絵の具を立体的に盛り上げた「レリーフ絵画」の迫力がすごい。

生誕110年 香月泰男展(練馬区立美術館)
最終日に駆け込み鑑賞。この時代に「シベリアシリーズ」を見るのは、心理的に少々しんどいですね。

空也上人と六波羅蜜寺(東京国立博物館)
東博に行ってみるとポンペイ展は当日券を求める長蛇の列。空也上人の方は余裕で予約できましたが、それでも入場制限はありました。口から6体のミニチュア阿弥陀像が出てくる姿は教科書で見て印象に残っていました。

ミロ展―日本を夢みて(Bunkamuraザ・ミュージアム)
ミロと日本の関わりがこんなに強かったとは知りませんでした。日本でのミロ受容や瀧口修造との交流にも興味あり。

4月は近美の清方展、新美のメトロポリタン展には行きたいと思っています。都美館ではスコットランド国立美術館展が始まりますし、西洋美術館も改修工事を終えて再開されるので上野方面も要注目。

2022年4月3日日曜日

2022年度の特殊切手

以前にブログ記事で紹介した美術切手の一覧表を、独立ページに貼ってみました。サイドメニューの「PAGES」の下にリンクが表示されているはずです(スマホ等ではタイトル「Hermit Days」の下にあるプルダウンメニューから選べます)。

念のため、ここにもリンクしておきましょうか。

 ■美術作品の切手リスト

随時アップデートしていますが、最近ではグリーティング切手「ライフ・花」に竹久夢二の作品が用いられ、それが20種類もあるので(63円と84円で各10種)けっこう場所を取っていますね。グリーティング切手に美術作品が使われるのは珍しいのではないでしょうか。

さて、この夢二切手は2月発行でしたが今月は恒例の切手趣味週間があります。昨年を除いてしばらくは琳派の屏風が続いていたので今年は…?と思っていたら、過去の切手趣味週間に使われていた浮世絵の再登場です。

 ■切手趣味週間(2022年)

歌麿に写楽とくれば、これはぜひともマキシマムカードを作成したいところです。最近はコロナのこともあって郵頼ばかりでしたが、郵頼は事務的に面倒だし為替料金も上がってしまったし、ということで久しぶりに押印会場に行ってみようかなと思います。

美術関連で今年発行される切手としては、8月に「美術の世界 第4集」があります。これは色がテーマになっていて、今までが青・赤・緑だったので、順番でいくと今年は黄色ですか?だったらゴッホの《ひまわり》はガチで入りそうですよね。日本画だと菱田春草とか?金色も入れて良ければ、御舟の散椿や愛知にあるクリムトの《黄金の騎士》も…?と、まだ決まったわけでもないのに勝手にいろいろ期待してしまいます。

そして10月には国宝シリーズ!今年は東京国立博物館創立150周年に合わせてくるみたいなので、東博の所蔵作品が選ばれるのでしょうか。《花下遊楽図》と《観楓図》は昨年使用されたので、何だろう……有名どころでは《松林図屏風》や《洛中洛外図》(舟木本)が思い浮かびます。10月は国際文通週間もあるので忙しそうです。



「大吉原展」その2・展示感想編

東京藝術大学大学美術館で開催中の「大吉原展」について。開催前の炎上騒動については前回詳しく書きました。今回は展示内容についての感想です。 その前に、大事なことなので前回の注意事項を繰り返しておきます。 図録は大きくて重い。東京新聞のサイトから通販可 ひととおり見る...