今更ではありますが、スープストックトーキョー「炎上」の件について、覚書程度に書いておきたいと思います。「炎上」とカギカッコを付けたのは、通常の炎上案件とちょっと違う感じがしたので。
個人的にスープストックトーキョー(長いので以下「SST」)は好きなお店で、東京にいた時はよくランチに利用していました。今も、仙台駅のエスパルにあるお店には時々行きます(東北地方唯一の店舗!)。スープが美味しいし、短時間でさくっと食事できるし、メニューが週替わりなので「今日は何があるのかな?」という楽しみもあり、お店も気軽に入りやすい感じ。
さて今回の炎上。発端はSSTが一部店舗で実施していた離乳食の無料提供を全店舗に拡大するとアナウンスしたことでした。これに対し一部常連の方からSNSで「子連れ客が増えたら落ち着いて食事できなくなる」等の批判が出たらしい。するとそれに対してまたすごい反発が起きて「炎上」状態になったようです。
■ (4月25日8時更新)Soup Stock Tokyoの離乳食・キッズセット
「らしい」とか「ようです」とか書いているのは、私が知った時はすでに数日が経過していて、元になった批判投稿はもう探せないくらいだったから。検索で出てきたのは「独身女のひがみだろう」とか、あるいはもっと酷い、批判者の属性や容姿を決めつけて揶揄するような悪罵ばかりで、これはこれでドン引きですよ。中には「SSTは独身女性のたまり場らしい」と、わざわざ店舗へ行って女性客を品定めするかのようなツイートもあって、うんざりしてしまいました。こちらの方がよっぽど「落ち着いて食事できなくなる」と思うのですけどね。
で、騒ぎから数日経ってSSTは声明を発表しました。これが「素晴らしい」と各方面から大絶賛。
特に「安易な謝罪をせず、企業理念を淡々と伝えているところ」が評価が高いですね。私もこの発表内容は良かったと思います。この手の声明は、下手な企業がやると、まず「お詫び」があり、そのくせ誰に何を謝っているのかを曖昧にしたりするので、ますますイライラさせられてしまうのです。
そして、私が嫌いな「配慮を欠く」「誤解を招く」「ご不快な思い」といった表現がないこと。今後炎上した企業は、この3つをNGワードにしてほしいです。
今回SSTは何も悪いことをしていないので謝罪なし。それで良いのです。「炎上」とカギカッコを付けた意図をおわかりいただけましたでしょうか。炎上というか、周囲が勝手に燃え上がっただけでしたね。
ただ「お客様を年齢や性別、お子さま連れかどうかで区別をし、ある特定のお客様だけを優遇するような考えはありません」の部分が絶賛されていることについては、ちょっと微妙な気持ちです。だって客商売なら当然の話ではないですか!? いや実質的に優遇はあったとしても、表向きは皆そう言うでしょ? これが絶賛されるほど現代の日本は分断された社会になってしまったのでしょうか。
それから、ひとつ言わせていただければ、最初のアナウンスにあった「お客様のライフステージが変わり」という文言は必要なかった気がします。「ステージ」という言葉は段階を踏んで「上がって行く」印象もあるので、子連れの方がステージが「高い(偉い)」と言われたように感じた人もいたのではないでしょうか。
SST「炎上」の件はそんなところです。これからもスープ食べに行きますよ。で、それはそれとして、ちょっと気になった点を書いておきます。
まず、SSTが「独身女性のための店」「孤独な女性の憩いの場」みたいな言われ方をしていることです。週末のポリタスTVでちらっと取り上げられた時もそんな扱いだったような……というか、扱いというほどお店に関心がある感じでもなかったのですが。
確かにSSTは一人で利用しやすい店です。でも「憩いの場」って言われると、それはちょっと違うんじゃない? 単にスープの美味しい店でしょ? それに一人で利用することは必ずしも独身であることや孤独であることを意味しませんよね。一人で好きなものを好きな場所で好きなように食べる、というだけのことです。「一人で食事をする女性」に対する社会からの眼差しについて、少々考えさせられました。ていうか、うぜーんだよ。普通にメシ食ってるだけじゃん。放っとけよ。
そして、SSTがターゲットを独身女性から家族持ちへシフトさせようとしているのでは? という深読みについて。これについても、どうもピンと来ません。
だって、元から子連れのお客さんけっこういません?
曜日や時間帯にもよりますけど、ショッピングセンター等にある大きめのお店では割と見かける気がするんですよねぇ。私が行ったことのある所では、立川ルミネ、池袋ルミネ、吉祥寺キラリナ店とかですね。キッズチェアのあるお店も多いし、家族連れもターゲットなんだと普通に思っていました。
最後に。この「炎上」騒ぎを取り上げた記事、Webメディアでいくつか読みましたが、いわゆる「こたつ記事」ってやつが多いですね。「批判の声」もその反論もSNSにしかないから仕方ないのかな。それにしても、SST側の対応として記述されたのがWebに掲載されたステートメントの引用だけとか。直接取材とかしないものなんですかね。ビジネスジャーナルの記事はタイトルがひどすぎ。「スープストック、離乳食無料提供への批判ピシャリ…」と書いていますが、記事本文には「ピシャリ」とはねつけるような印象はありませんよ。"Soup for all" のお店ですよ。
それにしても、ちょっとした愚痴やぼやきを「女の敵は女!」みたいな対立構造に持ち込んで煽ったり、独身女性が冷遇される状況を面白がったりする人が多すぎるような気がしますよ。そんなことより美味しいスープ食べに行こうよ。
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