Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「ボテロ展 ふくよかな魔法」のブロガー内覧会に参加させていただきました。主催者・運営者の皆様ありがとうございました!
正直に言うとこの「ボテロ展」、それほど興味は持っていませんでした。画風があまり好みじゃないし何だかマンガっぽいし、何より最近の渋谷は「コロナ前」の混雑が戻ってきていて不安です。
でも混雑は別として、そういう印象の展覧会ほど、行ってみて「新しい発見があった!」と思うことは多いんですよね。それにワクチンも三度目を打ったことだし……というわけで、思い切って行って来ました。今回も行って良かったです!
さて、この「ボテロ」さん。上の看板写真でおわかりのように、人物でも静物でも、とにかくモチーフを何でも「ふくらませて」描くことで有名。日本では「ボテッとした絵のボテロさん」と語呂も良いです。1932年コロンビア生まれで、今年は生誕90年記念になります。まだお元気で活躍中というところが素晴らしい。
日本での個展は何と26年ぶりだそうです。全体は次のような章構成になっています。
- 1章 初期作品
- 2章 静物
- 3章 信仰の世界
- 4章-1 ラテンアメリカの世界
- 4章-2 ドローイングと水彩
- 5章 サーカス
- 6章 変容する名画
※以下、会場内の写真は内覧会のために特別に許可を得て撮影しています。
1章の初期作品から、すでに「人体」と「ボリューム」が重要な要素であったことがわかります。
明確に「ふくらんだ」形を描くようになったきっかけは、会場内に解説ビデオで明かされています。マンドリンを描いた時に、中心部の穴を小さくしてみたところ、楽器が「爆発したように」ふくらんで見えたことから始まったそうです。実際にボテロ絵画は、ただ物をふくらませるだけではなく、それと対比するように必ず何かが小さく描かれています。人体なら手の指やつま先が小さく、人びとの集まっている所には、縮尺上ありえないほど小さな人物がいたりします。
そして物の形とともに重要なのが「色彩」だと思いました。↓この花の三幅対、すっごいきれいですよね。近くで見ると花の一輪一輪の描き込みが細密で、なおかつ図案化されたデザインの美しさもあり、ずっと見ていても飽きません。黄、青、赤はコロンビアの国旗の色です。
大小の対比はこんな所にも。写真ではよく見えませんが、画面いっぱいを埋め尽くす洋なしから顔を出す虫が可愛い。展示作品の中では、この虫ちゃんが一番のお気に入りです。
ひとしきり静物を見た後に人物が登場しますが、誰もかれもみな無表情です。《コロンビアの聖母》(下の左端)は顔一面を涙で濡らしていますが、顔はやはり無表情で何を見て何のために泣いているのかよくわからない。これは、敢えて表情を消し去ることで、鑑賞者に影響を与えず「静物のように見てほしい」という意図があるのだそうです。
表情がない――というのは、見ている側にとっては少々の戸惑いというか、ある種「居心地の悪さ」を禁じ得ないものがあります。
踊っていても楽しいんだか楽しくないんだか。バルコニーから女性が転落する、殺人現場と思しき場面にも何だか緊張感がありません。ぷくぷくの形状と明るい色彩のせいで悲しい印象はありませんが、この無表情さが独特のアイロニーを感じさせます。「突き放された」感と言ってよいかもしれません。でも、だからこそ絵の方に自分から寄って行かざるを得なくなる。
ボテロの描くモチーフはラテンアメリカ的なものが多く、ボテロ自身「土着的なもの」を重視していると述べていますが、ボテロは若い頃にヨーロッパへ渡り、ルネサンスから連綿と続く西洋絵画史の線上に自らを位置付けています。パロディではなくオマージュ、ローカルなモチーフとグローバルな絵画理論――そういう真面目なことを考えてみようかなと思ったのですが、しかしこの造形では、考える前に笑ってしまいます。
ただふくらませるだけではなく、さりげなく改変されているところがあるのですが、そこに遊び心があるのですよ。ボテロ版《アルノルフィーニ夫妻》では、解説を読んでクスッと笑ってしまいました。こういうウィットが素敵ですね。詳しくはぜひ会場でご覧ください。
遊び心といえば図録も面白いですよ。表紙がクッション入りのプクプクした素材でできているのです。図録もふくらむんかーい!
この第6章では、一部作品が撮影できます。また5月中の金曜と土曜は、17時以降全作品の撮影ができるとのことなので、興味のある方は下にリンクした公式サイトの「トピックス」でご確認ください(混雑状況によって変わるかもしれないので)。
この展覧会では、ダンス&ボーカルグループのBE:FIRSTがオフィシャルサポーターを努め、声優の伊東健人さんとともに音声ガイドにも登場。私は詳しく知らないのですが(すいません)、ファンの方は要ご注目です。
会場の外には、広島市現代美術館から彫刻《小さな鳥》もやって来ています。やはりというかどこが小さいんや!というボリューム感ですが、羽とクチバシの小ささが愛らしい。
同じBunkamuraの中にある「ル・シネマ」では、映画「フェルナンド・ボテロ 豊満な人生」を上映中。半券割引もあるみたいです。
開催概要
- 展覧会名:ボテロ展 ふくよかな魔法
- 公式サイト:https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_botero/
- 会期:2022年4月29日(金・祝)~ 2022年7月3日(日)
- 開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで) ※毎週金・土は21:00まで(入館は20:30まで)
- 会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急百貨店本店横)
- 主催:Bunkamura、日本テレビ放送網、日テレ アックスオン
- 巡回:名古屋市美術館、京都市京セラ美術館
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