2021年12月31日金曜日

2021年展覧会ベスト5


今年もベスト展覧会を選んでみました。昨年に引き続き、展覧会に行く回数が減っているのでベスト10ではなくベスト5です。順位はつけず、鑑賞した順に並べています。

ミティラー美術館コレクション展(たばこと塩の博物館)
インドの伝統的な手法で描かれた絵画やテラコッタなど。素朴な味わいとスケールの大きさが凄かった。一口にインドといっても地域や民族による違いがあることや、現代との「地続き」感が感じられたことも印象に残ります。そしてこの「ミティラー美術館」が新潟県にあるという事実にまたびっくり。

渡辺省亭―欧米を魅了した花鳥画―(東京藝術大学 大学美術館)
七宝焼きの原画を描いた人、という程度の認識でしたが、思いのほか画業の幅が広く、またどの作品もため息が出るほど美しい。こんなにレベルの高い作品ばかりなのに、最近まで忘れられた存在だったなんて……(展覧会や画壇から距離を置いていたことや、弟子を取らなかったことが理由のようです)。

あやしい絵展(東京国立近代美術館)
近代日本の精神を探るような構成の展覧会。西洋の文化、神話、異世界、時代、文学。「美」とは何か、また「美を描く」とはいかなる行為であるかという点も考えさせられます。

版画の見かた ―技法・表現・歴史―(町田市立国際版画美術館)
版画という技法/メディアを包括的におさらいするような展覧会。複製という属性を持つ「版画」技法は、芸術作品としてさまざまな表現の可能性を持つと同時に、大量生産システムに組み込まれていく運命も担っているんだな、みたいなことを思いました。

グランマ・モーゼス展(世田谷美術館)
今年いちばん楽しみにしていた展覧会です!無事に開催されて本当に良かった。素朴な描線で、視点の取り方や遠近感のおかしい所はあるのに作品としてまとまり感があるというか落ち着きを感じます。刺繍絵などで長年培ってきた技法が、色使いや構図のまとめ方に活かされているからなのでしょうか。

以下は次点です。

電線絵画展-小林清親から山口晃まで-(練馬区立美術館)黒船から現代までの「電線」に注目した絵画展。電線だけで展覧会ができるというのも驚きですが、これも日本の近現代を表す風景なのですよね。

動物の絵 日本とヨーロッパ(府中市美術館)キャッチコピーの「ふしぎ・かわいい・へそまがり」がすごく的確に表していますね。日本美術と西洋美術に描かれたさまざまな動物たち。めっちゃ面白かったです。


今年は、たのしみにしていたマティス展とカラヴァッジョ《キリストの埋葬》展が中止になってしまったのが、本当に残念でした。でも昨年中止されたボストン美術館展は来年の開催が決まりましたし、カラヴァッジョも別の作品が来るので見に行きます!コロナ禍で展覧会を開催・運営する手法も確立されてきた気がするので、オミクロンに気を配りつつ、美術鑑賞を続けたいと思います。

来年もこのブログをよろしくお願い致します。皆様どうぞ良いお年をお迎えください。


日経おとなのOFF 2022年 絶対に見逃せない美術展

2021年12月30日木曜日

11月・12月に鑑賞した展覧会

そろそろ年間ベストを決める時期になってきました。今年もベスト10は無理でベスト5になりそうですが……。

2021年展覧会納めとして、先日「大・タイガー立石展」を見てきました。埼玉は2館に分かれての同時開催で、徒歩で移動するとけっこう歩きます。あと両方で見る場合、チケットは別々なのですが「トラ割り」という券をもらえるので、それを見せると割引になります。私は最初に行った館でなぜかこの券をもらえなくて(配布忘れ?らしい)あやうく割引なしになるところでした。結局、半券を見せることで割引になりましたが……ちょっと何だかなぁという感じ。だったら最初から半券割引とかセット販売にした方が良くないですか?

それはともかく、11月と12月に鑑賞した展覧会をまとめて振り返ります。


版画の見かた ―技法・表現・歴史―(町田市立国際版画美術館)
版画というメディア全体をさまざまな角度から紹介する展覧会。芸術作品としての版画だけでなく、複製技術としての側面から「印刷」メディアまで幅広くカバーしていました。

動物の絵 日本とヨーロッパ(府中市美術館)
あれ、こんな季節に「春の江戸絵画まつり」?と思ったら違いました。江戸絵画展でおなじみの動物画や徳川家光の「ゆる作品」とともに動物を描いた西洋絵画も展示され、洋の東西を比較検討する面白い内容でした。

縄文2021―東京に生きた縄文人―(江戸東京博物館)
東京地域での遺跡や発掘調査の紹介、当時の暮らし方を再現したジオラマや、出土品からわかる交易の様子など。縄文と一口に言っても1万年以上も続いたんですよねぇ。

グランマ・モーゼス展(世田谷美術館)
素朴派の中でも大好きなグランマ・モーゼス。昨年から楽しみにしていました。自然の風景や農作業を描いた作品が面白く、東京展は特に冬季の開催なので季節感もばっちり!

聖徳太子 日出づる処の天子(サントリー美術館)
東博の展覧会は法隆寺でしたが、こちらは四天王寺メイン。「絵伝」以外にも現代につながるさまざまな太子像が鑑賞できました。山岸凉子作品の原画では、王子が笛を吹く場面が選ばれていましたが、その実物と伝わる笛の現物が冒頭に展示されています!

大・タイガー立石展うらわ美術館埼玉県立近代美術館
府中市美術館で《登呂井富士》を見てから気になっていたタイガー立石の回顧展。絵画以外にも漫画・デザイン・絵本と画業の幅が広く、またそれが優劣なく併存・融合している感じが面白かったです。


2021年12月27日月曜日

9月・10月に鑑賞した展覧会

 9月と10月に鑑賞した展覧会をまとめて振り返ります。緊急事態宣言が解除され、8月にはワクチンも2回目を接種したので、行く回数は多少増えたものの、なかなかペースは元に戻りませんね。


風景画のはじまり コローから印象派へ(SOMPO美術館)
以前は本社ビルの42階にあった美術館。新館に移転して初めて行きました。コロー作品をこれだけまとめて見たのも初めてかも!点描で描かれた珍しいドービニー作品があってびっくり。

大江戸の華―武家の儀礼と商家の祭―(江戸東京博物館)
甲冑や乗り物などの武家文化と、商家の年中行事。富永稲荷の社殿の再現ぶりがすごかった。

ピーター・シスの闇と夢(練馬区立美術館)
冷戦体制下のチェコスロヴァキア(当時)に生まれ、80年代にアメリカに亡命した絵本作家。ヨーロッパの古都プラハの持つ歴史と自由への憧れを強く感じさせる作品が印象に残りました。

印象派・光の系譜(三菱一号館美術館)
これは内覧会に参加して紹介記事を書きました。

ゴッホ展-響き合う魂 ヘレーネとフィンセント(東京都美術館)
海外から大量の作品を借りて開催される大型展覧会ということで、少々不安に思っていましたが、無事に開催されて良かったですね。クレラー=ミュラー美術館の名前は、新印象派やゴッホの展覧会でたびたび見かけてはいたものの、コレクションを築いたヘレーネ・クレラー=ミュラーについては、あまりよく知りませんでした。最近はコレクターにも焦点を当てた展覧会が増えてきたように思います。

甘美なるフランス(Bunkamuraザ・ミュージアム)
ポーラ美術館のコレクション展。印象派以降、近代のフランスを中心に、都市文化や生活を描いた作品や、「エコール・ド・パリ」作家の作品など。このブログ的には、切手に採用された作品が展示されていなかったことが少々残念ではありますが……。


2021年12月25日土曜日

2022年に使う私の手帳

来年の手帳について書こうと思っているうちに年末になってしまいました。そろそろ手帳の「引き継ぎ」をされている方もおられると思います。

私は来年、久しぶりに「ほぼ日手帳カズン」を使うことにしました。前回使ったのは「お言葉」が別冊になっていた時期ですから、かなり前です。今回のカバーは前にも書きましたが、ソール・ライターです。売り切れが予想されたので早めに入手しておきましたが案の定、ほぼ日のサイトでは少し前まで「売り切れ・再販予定なし」になっていました。現在は「2月1日再販予定」になっていますが、2月ということは、4月始まり版ですよね?(それって「再販」?)


でも買っておいてなんですが、ちゃんと使えるかなというのはちょっと不安……。

久しぶりにカズンを使うことにしたのは、ほぼ日サイトにある「このように使っています」という記事を読んだことがきっかけなのです。

 ■ あのひとの「ほぼ日手帳」006(「昔のページですよ」という警告ダイアログが出るので「このまま、以前のほぼ日手帳のページを見る」をクリックして進んでください)

タイトル部分にも書かれている「辞書のような『研究手帳』のカズン」を見て「これは!」と思ったんですよ。「ほぼ日」といえば、さまざまな紙モノを貼り込んでものすごく分厚くしている写真がInstagramなどでもお馴染みですが、紙モノ好きにはけっこう、ぐっとくる光景ではないでしょうか。よし、私も来年から仕事の資料と進捗管理はカズン1冊にまとめよう!それまでは同サイズのノートで試行錯誤しながら具体的な使い方を決めるのだ!

……と、思ったのは良いのですが、試行錯誤するうちに迷いが(あるある)

実を言いますと、その後 Notion というオンラインのツールを使い始めてしまい、資料は極力デジタル化してこちらにまとめておこうということになりました。

 ■ Notion

え、じゃあカズンはどうするの?というのが「イマココ」の状況なのですが……。

いまのところ、カズンではウィークリーをスケジュール管理、デイリーをジャーナリングとプロジェクト管理に使い、マンスリーをデイリーページの目次にしようかなと考えています。「プロジェクト」って、言葉はカッコいいですが、そんな大げさなことではないですよ。例えば、前回の記事に書いた「北斎の風景印の正体を調べる」というのも、現在進行中のプロジェクトだし、「タイガー立石の展覧会を見に行く」というのもプロジェクトなんです。

時間管理とタスク管理についても、そのうち参考書などをまとめてご紹介したいなと考えています。これも「プロジェクト」のひとつ――というか、「プロジェクト」という言葉をこういう用途に使うこと自体、GTD (Getting Things Done) という方法論に基づくものです。詳しくは以下の書籍をご覧ください。


『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』


美術作品で作るマキシマムカード (4)

ちょっと時間があいてしまいましたが、このシリーズまだ続きます。今回は2020年に発行された「国宝シリーズ」の第1集(考古資料)と、2022年の世界遺産シリーズ第15集「北海道・北東北の縄文遺跡群」で作成したマキシマムカードです。 国宝は昭和の時代から切手のモチーフとしては定番で、...