今年もベスト展覧会を選んでみました。昨年に引き続き、展覧会に行く回数が減っているのでベスト10ではなくベスト5です。順位はつけず、鑑賞した順に並べています。
ミティラー美術館コレクション展(たばこと塩の博物館)
インドの伝統的な手法で描かれた絵画やテラコッタなど。素朴な味わいとスケールの大きさが凄かった。一口にインドといっても地域や民族による違いがあることや、現代との「地続き」感が感じられたことも印象に残ります。そしてこの「ミティラー美術館」が新潟県にあるという事実にまたびっくり。
渡辺省亭―欧米を魅了した花鳥画―(東京藝術大学 大学美術館)
七宝焼きの原画を描いた人、という程度の認識でしたが、思いのほか画業の幅が広く、またどの作品もため息が出るほど美しい。こんなにレベルの高い作品ばかりなのに、最近まで忘れられた存在だったなんて……(展覧会や画壇から距離を置いていたことや、弟子を取らなかったことが理由のようです)。
あやしい絵展(東京国立近代美術館)
近代日本の精神を探るような構成の展覧会。西洋の文化、神話、異世界、時代、文学。「美」とは何か、また「美を描く」とはいかなる行為であるかという点も考えさせられます。
版画の見かた ―技法・表現・歴史―(町田市立国際版画美術館)
版画という技法/メディアを包括的におさらいするような展覧会。複製という属性を持つ「版画」技法は、芸術作品としてさまざまな表現の可能性を持つと同時に、大量生産システムに組み込まれていく運命も担っているんだな、みたいなことを思いました。
グランマ・モーゼス展(世田谷美術館)
今年いちばん楽しみにしていた展覧会です!無事に開催されて本当に良かった。素朴な描線で、視点の取り方や遠近感のおかしい所はあるのに作品としてまとまり感があるというか落ち着きを感じます。刺繍絵などで長年培ってきた技法が、色使いや構図のまとめ方に活かされているからなのでしょうか。
以下は次点です。
電線絵画展-小林清親から山口晃まで-(練馬区立美術館)黒船から現代までの「電線」に注目した絵画展。電線だけで展覧会ができるというのも驚きですが、これも日本の近現代を表す風景なのですよね。
動物の絵 日本とヨーロッパ(府中市美術館)キャッチコピーの「ふしぎ・かわいい・へそまがり」がすごく的確に表していますね。日本美術と西洋美術に描かれたさまざまな動物たち。めっちゃ面白かったです。
今年は、たのしみにしていたマティス展とカラヴァッジョ《キリストの埋葬》展が中止になってしまったのが、本当に残念でした。でも昨年中止されたボストン美術館展は来年の開催が決まりましたし、カラヴァッジョも別の作品が来るので見に行きます!コロナ禍で展覧会を開催・運営する手法も確立されてきた気がするので、オミクロンに気を配りつつ、美術鑑賞を続けたいと思います。
来年もこのブログをよろしくお願い致します。皆様どうぞ良いお年をお迎えください。