三菱一号館美術館で開催中の「イスラエル博物館蔵 印象派・光の系譜」展のブロガー内覧会に参加させていただきました。主催者・運営者の皆様ありがとうございました!
内覧会は本当に久しぶりで、コロナ以降は初めてです。以前は担当学芸員さんの周りに集まって解説や見どころを聞くというスタイルが一般的でしたが、このご時世なのでギャラリートークは距離を取ってインカムで聞くスタイルになったようです。ようです、というのはインカムの使用を申し込み時にチェックしなければいけなかった(希望者多数の場合は抽選)らしいのですが、その点を見落としていたみたい。そんなわけで、今回は作品鑑賞のみになりました。
以下、展示コースに沿って内容をご紹介します。掲載している写真は、特別に許可を得て撮影したものです。
今回の展覧会に作品を提供しているイスラエル博物館は、1965年にエルサレムに開館された博物館で、死海文書で有名ですが、絵画作品も多数所蔵しています。2018年に開催された「ミラクルエッシャー展」の作品もここのコレクションでしたね。
今回は印象派を中心に、バルビゾン派からポスト印象派あたりまでの作品を展示。タイトルに「光の系譜」とあるように、光の表現に注目させるラインナップになっています。
1. 水の風景と反映
最初の部屋にはコローやドービニーの作品が並びます。コローの作品は、特徴的な霧にけぶる木々の表現が印象的。湿度高そうです。
次の部屋は時代が少し進んで印象派のモネやブーダンの作品があり、色彩がぐんと明るくなった感があります。モネの描くエトルタの奇岩もありました。
3階の大きな部屋ではメインビジュアルになっているモネ《睡蓮の池》とご対面。1907年の作品です。モネは、この睡蓮を連作として200点以上描き続けていますが、この1907年は《睡蓮の池》の当たり年とも言われているとか。同じ構図で描いた作品が国内にも3点所蔵されており、本展にも特別展示作品として展示されています(10月現在は2点のみ)。
明るく柔らかな光を表現する作品が多い中、レッサー・ユリィの《風景》が少々異彩を放っていて印象に残りました。ユリィはドイツ出身の画家で、分離派に参加しています。
モネの連作《睡蓮》については、決定版ともいえる書籍があります。著者の安井裕雄さんはこの三菱一号館美術館で学芸員をなさっています。
2. 自然と人のいる風景
郊外の村や田園の風景。自然の広がりとともに、その中にいる人の姿も描かれています。そもそも田園というのは人の手が加わった自然の形なので、人がいるのは当然かもしれません。ゴッホ作品が2点並んでおり、赤と緑、黄と青という組み合わせの色使いが美しいです。
廊下を通って小部屋に入ると、ゴーガンの作品群に迎えられます。こぎれいに整った「ヨーロッパの田園」とは一味違うタヒチの踊りや、その後のナビ派につながるような大胆な色彩。
3. 都市の情景
農村の風景とくれば、次には都市の風景。オスマンの大改造で近代都市に生まれ変わったパリの風景が並びます。ピサロの作品が多いですね。
ここで先ほど名前の出たレッサー・ユリィが再び登場。ベルリンを描いた作品がとてもモダンで洗練されています。
フォルカー・クッチャーが書いた、大戦前のベルリンが舞台の小説を思い出しますね。
さて、階段で2階へ降りると、上記の特別展示作品《睡蓮》が並んでいます。現在はDIC川村記念美術館と和泉市久保惣記念美術館の作品。もうひとつ、東京富士美術館の作品は11月30日以降になるとのことなのでご注意ください。
そして次の部屋にはルドンの《グラン・ブーケ》。
4. 人物と静物
最終章は「人物と静物」で、場面は戸外から室内へ。人物画はやはりというべきかルノワールの作品が多数ありますが、個人的に印象に残ったのは、下の右端にある《花瓶にいけられた薔薇》です。ルノワールは確かに人物を好んで多く描きましたが、花や果物などの静物にもすぐれた作品が多数あります。
そして室内の日常を描いたヴュイヤールやボナールの作品など。赤い絨毯がぱっと目を引く作品があると思ったら、またしてもレッサー・ユリィでした。ユリィという画家とその作品を知ることができたというのは大きな収穫だったと思います。
「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」
- 会期:2021年10月15日(金)~ 2022年1月16日(日)
- 三菱一号館美術館
- 公式サイト:https://mimt.jp/israel/
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