たまには時事問題なども。
10月の始め頃からTwitterその他で話題になっている右派アカウント「dappi」氏問題。国会での質問に取り上げられてから大手メディアでも報じられるようになりましたが、ちょっと情報が混乱気味なので(私が混乱しているだけなのかもしれませんが)、ちょっと整理してみました。
現時点でこの問題に直接関連することをざっくり説明すると、
- Twitterアカウント「dappi」が立憲民主党の小西議員の名誉を棄損
- 小西議員は開示請求を行い、判明した企業を相手に訴訟を提起
……というところです。今北産業で書こうとしたら2行で終わってしまいました。いやー、でも確実だと思うことに絞ってみたらこうなっちゃうんですよね。その背後に誰がいるか、とか色々想像はしていますが、想像の域を出ていません。
この問題、関心も高いと思いますので、そのうち続報もあるでしょう。この手の話題に強いのはやはりBuzzFeed Newsなので、注目しておこうと思います。dappi氏の正体や背後関係も気になりますが、この件をきっかけに政治宣伝工作の仕組みに対して注目が高まっていくことを期待したいです。
dappiとは誰か、何が問題なのか
そもそもdappiとはどういうアカウントなのか。現行のdappi2019は2019年6月に開設されましたが、これは2代目。以前はtake_off_dressというアカウントで2015年くらいから活動していたようですが、こちらは凍結、つまりアカウントはあるものの利用できない状況にされています。
ツイートの内容は主に、自民党や維新などの右派政治家を礼賛し、他の野党議員をこき下ろすというもの。それ自体は良いのですが、問題は虚偽の内容が含まれていること。国会中継の動画を切り貼りしてまったく別のやり取りに仕立てるなど、悪意あるデマ攻撃があるということが、以前から指摘されてきました(1)。本人にもフォロワーが大勢いますが、さらに著名人がリツイートすることが多く、かなり拡散力の強い存在であったといえます。dappi氏の存在は国外でも注目されていたらしく、外国の外交官も関心を持っていた(2)ようです。
1. https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/toshu-toron
2. https://twitter.com/masurakusuo/status/1447550855087943688
国会の会期中はずーっと中継に張り付いて動画を投稿。動画を編集してアップする作業の速さと手際の良さ、またツイートの時間帯が平日の9時から5時という、いわゆるビジネスアワーに集中していることから「仕事でやっているのではないか」という憶測もなされてきました。それを指摘されてから、ちょっと時間帯が広がったりしたみたいですが…。
自民党との関係
これがいちばん憶測を呼んでいますし、だからこそ慎重にならざるを得ないのですが。今のところdappiアカウントと自民党を直接結ぶ報道は(まだ)ないと思います。
dappi氏がネット接続に使っていた回線の契約者が法人(小西議員が提訴した相手企業)であることから、そこの社員がこのアカで投稿していたのではないかと思われるものの、10月16日現在この企業は何もコメントを出していませんし、どうも取材できない状況みたいです。なので、社員が就業時間中にこっそり脱皮していたという可能性もギリ残ってるんじゃないかと(どんな会社だよ)。この会社の回線を使っていたということは、テレワークではないですよね。
自民党の都連や所属議員がこの企業と取引していたことは確かで、それは政治資金収支報告書に記載されていますが、Webサイト制作を発注するといった普通のお仕事のようです。「Twitterで野党をこき下ろす活動」とか書いておいてくれればわかりやすいんですけどねぇ。
日刊ゲンダイの「新疑惑!」は、「岸田首相や甘利幹事長が代表取締役を務めていた企業」に言及していますが(3)、これは上記企業の「取引先」であって、これも間接的じゃないでしょうか。この、記事中にある「A社」がどういう企業なのかいまいちよくわかりませんが、自民党議員や都連から仕事を受注しているなら、A社とも何か取引があってもおかしくない気がします。私がよくわかっていないだけなんでしょうか。
3. https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/296085
また、自民党が選挙中にネットで対立候補のネガティブキャンペーンをやるのも事実で、これは河井克行元法相の公判で明らかになっています(4)。この「対立候補」って、河合案里さんの時は同じ自民党の溝手さんです。
他に自民党にはネットサポーターズクラブというのもあって、とにかくネット上ではいろいろ活動しているようです。あれこれ考えあわせて、だからdappiの背景には自民党が!業務としてデマ拡散を請け負っていた!と思いたくなる気持ちもわかるのですが、点と点をつなげるのはもっと慎重になった方が良いのではないかと思います。
ちょっと相関図を描いてみました。こんな所で合ってますか?
その他
dappi氏が「ただのネトウヨではない」と言われていた理由には、投稿時間などの他に
- 議員だけに配布された内部資料を持っていた
- 国会図書館分館を利用できる
という2点がありましたが、その後に出てきた指摘も含めてよくよく調べてみると、どちらも怪しい。
まず、最初の「内部資料」は、昨年1月の参議院予算委員会のものだと思いますが、これはその数時間前に社民党の福島議員が投稿しているものという指摘がありました(5)。
5. https://twitter.com/jishin_dema/status/1447055377359507461
画像をコピペして並べてみましたが、確かに。縮小しただけで同じものに見えます。
福島議員に許可を取って転載したとも思えないのですが、著作権を主張できる文書でもないと思うので、そのへんは問題ないのでしょう。
国会図書館分館の件は、数年前の首相動静の記事を短時間で揃えることができた、ということから言われているものだと思いますが、こちらも現段階では根拠不十分と言わざるを得ません。
これはモリカケ疑惑のいわゆる「愛媛文書」が出てきた時の話。2018年の5月に「加計理事長と安倍首相(当時)が2015年2月25日に面会した」とする文書が発表されましたが、その翌朝にdappi氏は当日の「首相動静」を6紙並べた画像を投稿し「どの新聞にも面会したとは書かれていない」と投稿しました(この投稿は旧アカウントで、現在は凍結されていて見ることはできません)。
で、その「主要6紙の記事」をどうやって集めたんだ!? と、皆驚きました。報道が出たのは前日の夕方で、投稿は翌日の9時50分。「6紙」の中には縮刷版のない産経新聞も含まれていたということで、「3年前の新聞の現物が保管されているのはどこだ」となったわけです。それなりに規模の大きな図書館に朝イチで行かないとできないでしょう。そこで出てきたのが国会議事堂内にある国会図書館分館(一般人は利用不可)なのですが(6)、ここを利用すればできる、ということであって、利用しなければできない、とは限らないと思うんですよねぇ。ではどうやったのか、と言われるとちょっとわからないのですが。
6. https://twitter.com/main_streamz/status/998947624542588928
個人的には一連のdappi問題の中でもこの新聞記事の調べ方が特に気になっています。どうやって調べたのかがわかれば、調べものするのに役立ちそうじゃないですか? でも、真相は案外単純なことなんじゃないかという気がしていますが…。
現在のところは以上です。
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