2025年3月19日水曜日

映画「Black Box Diaries」をめぐる問題 その1:問題点の整理


※以下の文章は3月13日~16日くらいに書いたものです。伊藤詩織氏が東京新聞の望月記者を名誉棄損で訴えたという件は、3月18日に訴訟の取り下げが報じられました。

タイミング的に少々話題に乗り遅れた感がありますが、伊藤詩織監督のドキュメンタリー映画 "Black Box Diaries"(以下BBD)について。昨年からニュースになっているのには気づいていましたが、最近になって急激に報道量が増えたこともあり、少々混乱してきました。これは私だけではなく、SNSを見ていても混乱や誤解に基づくポストが散見されます。なので、このへんで問題点を整理しておきたいと思いました。

……といってもBBDは日本未公開なので私自身は本編を見ていないし、数年前に出版された本も読んでいません。あくまで報道記事や記者会見を見たうえでのまとめです。本はそのうち読もうかなと思っていますが、現時点で私が関心を持っているのは映画そのものというより、映画に使用されている映像の使い方や、それを報じる記事の書き方なのです。

特に気になっているのは、映像使用の許諾問題について東京新聞が「誤報した」とされる問題と、伊藤監督側が同紙の望月記者を名誉棄損で訴えたという問題ですね。後から詳しく述べますが、東京新聞のWeb記事は私が見る限り「誤報」と言って良いのか疑問です。見出しには確かに誤りがあったと思いますが、本文までそうとは言い切れない。にも関わらず本文も含めて記事をまるごと誤りだと思っている方が多いように思います。

さて、まずは背景情報として、BBDという映画と、何が問題にされているかについて概要をまとめておきます。

この映画は、伊藤監督が10年前に性暴力被害を受けた後、その事実を実名で告発し、数々の誹謗中傷を受けながら長い裁判を戦い抜いた経緯を描いたセルフドキュメンタリーです。主人公である伊藤氏自身がスマホで撮影した映像を多用し、ある時はジャーナリストとして取材し、映画の監督も務めるという極めて個人色の強い作品となっているようです。

2024年1月のサンダンス映画祭で公開されて以降、海外では多数の映画祭で高く評価されてきました。米国アカデミー賞でも、受賞こそ逃しましたがドキュメンタリー部門にノミネートされました。しかし「許諾なく映像が使われている」と、元代理人の弁護士らが主張しており、日本国内では公開の目途が立っていません。

伊藤氏は2月に声明を発表し、「映像を使うことへの承諾が抜け落ちてしまった方々に、心よりお詫びします。最新バージョンでは、個人が特定できないようにすべて対処します」と述べました。「最新バージョン」はまだ公開されていませんが、この声明により許諾問題は一段落しました(全部解決したわけではない)。

BBDに関連する様々な問題点については、YouTubeの「ポリタスTV」でジャーナリストの津田大介さんが詳しく解説されています。ポリタスの番組は基本的に7日間のみ無料で視聴できますが、多くの人に見てほしい問題を扱う場合などには無料公開を続けることがあります。今回もそのようで、2月26日公開ですが3月16日現在まだ公開状態になっていますね。ありがとうございます。

https://www.youtube.com/watch?v=HzY5MhxMSN8

番組では以下のようなチャートを用いて説明されているので、スクリーンショットを撮らせていただきました。これを見ながら視聴するとわかりやすいと思います。



問題を箇条書きで整理すると

  • ホテルの防犯カメラ映像の無許諾使用(契約違反)
  • タクシー運転手の映像の使用(プライバシー侵害)
  • 捜査官の声と映像の使用(取材源を秘匿していない)
  • 非公開集会の映像の使用(一部無許諾、プライバシー侵害)
  • 弁護士との会話の無断録音・使用、事実を曲げるような使い方

……といった所になるでしょうか。一口に無許諾映像と言っても問題点が微妙に違うところがあると思います。

背景を含めて状況を把握するためには、FRaUに載った以下の記事もわかりやすい。

 ■伊藤詩織「Black Box Diaries」問題から何を学ぶか~未許諾が明らかになった背景

 ■伊藤詩織「Black Box Diaries」問題、性被害者支援の観点から懸念されること

防犯カメラ映像の使用と、弁護士との会話を録音使用することの意味については、以下の記事も参考になります。一般に思われているよりも重大な意味があるようです。

 ■伊藤詩織氏監督映画『Black Box Diaries』をめぐる問題 弁護士が“被害者軽視”を「許しがたい」と言う理由(弁護士JPニュース)

映像を編集することで実際とは違うストーリーを作っているのでは?という点については、上記FRaUに載っている小川たまかさんの説明、下記Arc Timesでの三輪記子さん(弁護士)の説明がわかりやすいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=mNEVYuqeoe4

背景を整理するだけでかなり長くなってしまったので、本題は項を改めて書きたいと思います。今回は前振りだけになってしまいました。

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