2023年9月2日土曜日

「マキシマムカード」の定義とは:その1

前回、夏をテーマにしたマキシマムカードをいくつかご紹介しました。マキシマムカードの作成が趣味でーす、とか言っておきながら何ですが、実は定義を厳密に把握していないということが最近わかってきたので、今回はその定義について少し考えてみたいと思います。

Moomin Letter Campaign 2

マキシマムカード (maximum card) は「マキシカード」と言われることも多く、私が最初に知ったのも、ポスクロ関連のブログで「マキシカード」という言葉を見かけて「何だろう?」と思ったのがキッカケでした。でも最近は省略しない「マキシマムカード」表記の方が多いみたい……「マキシカード」で検索すると、切手関係ではなくポケモンカードばかりヒットします。英語圏では maxicard の方が多いような気がするのですが。

で、マキシマムカードとは何かというと、私はずっと「ポストカードの絵柄面に切手を貼って消印を押し、その3つが共通または関連の深い図柄であること」であると思っていました。基本的にはこれで間違っていないと思います。

でも、いろいろ読んでいくうちに、それ以外にも条件を設ける考え方があると気がつきました。たとえば、切手の博物館にある「切手の豆知識」には次のような記載があります。

「絵葉書の絵や写真の面に、それと同じデザインの切手が貼られ、その絵や写真に関連する場所の消印が押され、そして消印の日付はその切手が発行された日」、これらが揃っているカードである。(第32回「マキシマムカード」

実はこのページ、最初にマキシマムカードについて言及した記事で、「詳しくは切手の博物館『マキシマムカード』をご覧ください」としてリンクしていたページでした。自分からリンクしていながら注意力不足でしたが、定義が微妙に異なることにお気づきでしょうか。

日付が「切手が発行された日」であることと、消印の絵柄に言及していない点です。

この「切手の豆知識」に大幅加筆して書きおろしを加えたものが『切手もの知りBOOK』という本になっており、上で引用した「マキシマムカード」の項目も「コラム」として収録されています。


『切手もの知りBOOK』

で、本の方では消印の条件が

消印の日付は、その切手の発行日が基本ですが、発行から1年以内は許容範囲だそうです。(p.42)

と、少々ハードルが下がっています。でもこの記述もいまいちはっきりしないというか……。「だそうです」と伝聞で書かれているのに出典がないので、誰が言っているのか、また「許容範囲」とは誰が許容するのかということがよくわかりません。郵趣界の偉い人が裁定するのでしょうか。「1年以内」の根拠は何なのでしょう。

それはともかく、これで思い出したのが、以前にポスクロのフォーラムで交換した中国のマキシマムカードです。


これ、オフィシャルなマキシカードらしいのですが、消印は絵柄のない普通のものですよね。ということは、消印に記された情報が重要だということなのでしょうか?

画像検索してみると、同じ絵柄のマキシマムカードがいくつか見つかりました。漢字部分(消印した郵便局の名前ですね、多分)はバラバラですが、日付部分は共通です。おそらく切手の発行日なのでしょう。ならば、場所の関連はなさそうですが、日付の点ではマキシマムカードの要件を満たしていることになります。

これは「初日カバー」のカード版と考えれば良いのでしょうか?

初日カバーというのは、封筒(カバー)に切手を貼り、その切手が発行された初日の消印を押したもの。宛名を書いて郵便物として実際に送ったものを「初日実逓カバー」と言うそうですが、通常は記念押印をしてもらいます。

上掲「切手の博物館」の解説ページはこちら。

 ■ 第13回「初日カバー」

封筒には切手と同じ図柄や関連する図柄を印刷したり描いたりすることが多いのですが、かならずしも必要ではなく、無地の白封筒に切手を貼ったものもよく見かけます。消印も絵柄のない「黒活」と呼ばれるものでも良いみたいです。全部の切手に絵柄付きの消印が作られるわけではありませんが、初日カバーは切手の発行を記念するための品ですから、消印の種類に関わらず作成するということなのでしょう。専門の業者さんが作成する初日カバーは、切手に関連する絵や写真を印刷した封筒に切手を貼り、特印または絵入りハト印、黒活、関連のある郵便局の風景印など何種類も消印が押してあり、立派な作品になっています。

まぁ初日カバーは名前から言って日付が重要なのはわかります。しかしマキシマムカードはどうでしょう?

ポスクロのフォーラムにもマキシ関連のスレッドがあり、日付の話題も出たことがあるのですが、その時は「消印の日付は要件ではない」という結論に落ち着いていたと思います。

また、切手についても「普通切手はダメで特殊切手のみ」という考え方があるみたい。ということは、普通切手で作ったこちらもダメですか?

"Shining Cherry Blossoms by Sumida River" by Yuichi TAKAHASHI

高橋由一《墨水桜花輝耀の景》に普通切手の桜、三鷹井の頭郵便局の風景印で作りました。この風景印をカタログで見た瞬間「由一の桜だ!」と思ったのですが、風景印の桜は井の頭公園のもの。由一の作品はタイトルに「墨水」(隅田川のこと)とあるので場所的にもアウト? 枝ぶりは似ているんですけどね~。

でも桜はグリーティング切手などでも定番なので、特殊切手でもまた作れるでしょう。

今思いついたのですが、日付を由一の誕生日にしてみるというのはどうでしょう? 由一は文政11年2月5日の生まれなので、令和11年2月5日に押印すれば同じ並びで作れますよね(旧暦なので厳密には違いますがその辺は無視で)。でも6年後まで覚えていられないっす。

そんなこんなで、マキシマムカードについて情報をまとめてみようと思ったものの、なかなかまとまりません(それでなかなか更新できなかった)。このテーマもまだ続きます。

次回は海外の基準について書いてみようと思います。


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