2023年10月13日金曜日

「マキシマムカード」の定義とは:その2

本業が忙しくて間があいてしまいましたが、「マキシマムカード」の定義について、続きを書いていこうと思います。今回は、海外での定義について。


マキシマムカードは、そもそも海外発祥です。ヨーロッパには17世紀頃からの「グランドツアー」文化があり、これは風景画の歴史でも時々言及されています。産業革命を経た19世紀には旅行者層も旅行先も拡大し、世界各地からさまざまな絵葉書が送られ、マキシマムカードもその中から誕生しました。

最初に投函されたマキシマムカードはエジプトのピラミッドを描いたポストカードを使ったもので、出した人は「間違って」切手を絵柄面に貼ってしまったが、ピラミッド図案がカード、切手、消印とお揃いなのが面白がられてブームになった――という話をどこかで読んだと思うのですが、出典が思い出せません。いま検索してみたけど見つからないので、ネットじゃなく本で読んだのかな。でも切手を間違って絵柄面に貼ることってありますかね? 出した人、図柄がお揃いなのに気づいて「こっちに貼ってみたら面白いじゃん?」と遊び心を出したのではないかという気がしますが、どうでしょうか。

それはさておき。2014年に日本郵趣出版から出版された『印象派切手絵画館』という本にはマキシマムカードに関するコラムが掲載されています。そこでは、マキシマムカードの要件として「切手に関連した同一のモティーフの絵はがきに切手を貼り、消印を押したものをいう。"マキシマム"という意味は、絵はがき図案、切手のモティーフ、それに消印のモティーフとの間に、マキシマム(最大)の一致が、要求されることから名づけられている」(p.44)とあります。


『印象派切手絵画館 (切手ビジュアルアート・シリーズ)』

さらに、切手・絵はがき・消印の各要素についても細かい規定がいろいろ書かれています。切手は表面に1枚だけ貼るとか、絵はがきの寸法は最大105×148mm、最小90×140mmとか。そして消印については「郵便局名は主題に関連したもの」となっています。関連とは、芸術作品の場合は所蔵する美術館の所在地、制作者の縁の地、制作した場所などです。重要なのは「郵便局名」であって、かならずしも絵柄付き消印でなくても良い、ということでしょうか。まぁ国によっては絵柄付き消印がそもそもない、ということもありますもんね。日付についても別に何も書いてありません。

でもカードのサイズはちょっと細かすぎないでしょうか。これだと日本で売っている大判(細長いタイプ)のポスカはダメだし、ご当地カードなどのフォルム(変形)カードもダメ。根津美術館で購入したポスカは上記の最大サイズよりタテヨコ約5mmずつくらい大きいのですが、それもダメですか~!?

さらに、カードの図柄についても「切手複写の絵はがきは利用できない」とあります。つまり、初日カバーでよくあるような、切手をそのまま拡大したようなデザインはダメ?

それで思い出したのですが、英国ではPHQカードというものが発行されています。これがまさに、切手をそのまま拡大したデザインになっており、ここに切手を貼って初日印を押したものが "FDI front" と呼ばれているようです(FDIは "First Day of Issue" の略)。つまり初日カバーのカード版なわけですが、ではこれも「マキシマムカード」とは別物ということになりますよね。個人的にはFDIフロントもマキシマムカードの一種ということで良くない? と思うのですが……。

そんなこんなで、「マキシマムカード」については、まだまだ探求すべきことがありそうです。

冒頭に示した画像は、ポスクロでswapしたベラルーシのマキシマムカードです。このイラストはベラルーシの伝統的なゲームだそうです。目隠しをして細長いフックを持ち、食べ物の入った容器をうまく引っ掛けて取れたら勝ち、というもの。日本のスイカ割りみたいですね。

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