2021年8月1日日曜日

『日出処の天子』と『聖徳太子』その2

前々回は、聖徳太子1400年遠忌展がきっかけで、山岸凉子『日出処の天子』(以下『日出処』)を久しぶりに再読しましたよということを書きました。

前回は池田理代子版『聖徳太子』(以下『太子』)とその盗作疑惑について、時系列を整理してまとめました。


文庫はコンパクトだけど現在は入手困難…

今回は『太子』の内容について少し書いておこうと思います。とは言っても、こちらの方はKindle Unlimitedに入っていた1巻しか読んでないんですよね。

  聖徳太子(1) Kindle版

で、1巻だけを読んだ感想としては正直「似てない」と思いました。厩戸王子の髪形など、作画で確かに似ている部分はあるものの、肝心のストーリーが似ていない。これは当たり前の話で、『太子』は王子誕生の場面から始まっているので、1巻の前半は『日出処』が始まる前の話なのです。後半は日羅関連の話になりますが、これも話の展開は別物です。というか似ていたら仏教史的にえらいことになってしまうでしょう😓

「あ、同じ場面あったな」と思うところは1箇所ありました。王子が戸棚を開けると大量の書物が保管されていて、周囲の人がそれを見て驚く場面。でもこれ、前回リンクした検証サイトにはなかったので(私が見落としてるのでなければ)、何か共通の元ネタがあるのかもしれません。中公文庫『日本の歴史』の2巻には「七歳のとき百済献上の経論数百巻を読破した」という(後世の作り話くさい)逸話が紹介されていますが、似たような場面が『聖徳太子絵伝』とかにあってもおかしくない気がします。

その他「類似点」として挙げられている場面は、並べてみると確かに似ていると思いますが、ストーリーの流れの中の一場面としてはそれほど似ているという印象はありませんでした。ただ『太子』版の「飛んでくる矢を粉砕する」場面、あれは確かにそれまでの流れから浮いているというか、唐突な感じがあったのは確かです。

全巻を通して読めばまた違う印象があるかもしれませんが、正直あまり読む気になれません。だって<小声>面白くないし</小声>。

何というか「学習まんが」的なのですよ。というか四天王寺の依頼で描かれたということなので、実際に「学習まんが」なのでしょう。仏教伝来に関する説明の台詞は妙に饒舌ですが、話の流れが淡々としているというか物語世界に「引き込まれる」感覚がない。

子供の頃は『ベルばら』に夢中になりましたし、『女帝エカテリーナ』も面白かったので残念ですが、この話はここまでにしたいと思います。

後は秋にサントリー美術館で開催される「日出づる処の天子」展を見るだけ!緊急事態が今後どうなるか心配ですが、無事開催されることを祈りたいと思います。


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