今年は聖徳太子の1400年遠忌ということで、展覧会が2つ開催されます。そのうちのひとつ「聖徳太子と法隆寺」が、東京国立博物館で始まりました。
というわけで、予習として中公文庫『日本の歴史』や『古事記』(もちろん現代語訳で)などを読みましたが、聖徳太子といえば外せないでしょう!というのがこれです。
若き日の聖徳太子(厩戸皇子)と蘇我毛人を中心とした物語。敏達天皇時代の末期から推古天皇即位までを描いています。
上にリンクした東博の展覧会は仏画や仏像を中心とするオーソドックスな内容ですが、秋に開催される↓こちらの方では、このマンガ作品も取り上げられるみたいです。
この作品は、はるか昔に雑誌連載で読んでいましたが(年がバレます)、途中読んでいない時期もありました。で、今回改めて全体を通して読んでみて、やはり面白い!
(以下、少々のネタバレを含みます)
前半、蘇我と物部の争いがあり、王子と蘇我(毛人)がどんどんのしていく展開はスピード感があってワクワクしながら読み進みました。でも後半になっていくにつれ、王子の内面描写が多くなり、そうなると少々読むのが辛くなってきますね。そしてラスト、これで良かったのだろうかというモヤモヤはどうしても残ります。
前半の方は、主な視点が毛人です。毛人から見た王子は、美しく聡明ですべてを見通しているスーパーキャラ的な存在で、戦争でも政治でも状況をうまくリードしていました。しかし、そんな王子も完璧な人生を生きているわけではないということがだんだんとわかってきます。求める愛情を得られず、満たされぬ思いを抱えたあげく、文字通り地面が裂けるほどの大失恋。
刀自古(毛人の妹)の存在も印象に残ります。蘇我と物部の争いの中で暴行されたというトラウマを抱え、異母妹が殺され「争いごとでいつも女が犠牲にされる」という憤りは現代にもある戦時性暴力に直結し、古代の物語世界と現代の読者の感性をつなぐ重要な役割を持っていると思います。特に連載されていた媒体は少女漫画誌で、読者の大半は若い女性ですから。
刀自古と王子は、途中ちょっとうまく行きそうな場面もあったのですが、後日談の「馬屋古女王」を読んだ感じでは、やはりダメだったみたいですね……膳美郎女との出会いがなければどうだったでしょうか。
山岸凉子さんのインタビュー(対談だったかな?完全版7巻ではなく別の記事です)によると、布都姫(毛人の恋人)は人気がなかったそう。まぁこれは仕方ないかな……正直共感し辛いキャラでした。唯一、崇峻天皇の暗殺場面で落ち着いた様子を見せ、神宝を守りに来たところは良かったと思いますが。
脇キャラで好きなのは大姫の妹。厩戸王子との結婚を嫌がる姉の大姫に「そんなにおいやなら私と代わって下さいませな」という場面がユーモラスで面白かったですね。
「馬屋古女王」からちょうど1400年にあたる本年、東博の方は先週鑑賞してきましたが、秋の展覧会も楽しみです。
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