2021年8月22日日曜日

5月に鑑賞した展覧会

緊急事態宣言により、4月末頃から都内の美術館は軒並み休館になってしまいました。しかし都内の一部と近県には開館している所もあったので、感染対策に注意しつつ、空いていそうな場所と時間帯を狙って鑑賞してきました。

コレクション 4つの水紋(埼玉県立近代美術館)
新規に収蔵されたポール・シニャック、埼玉ゆかりの南画家奥原晴湖、椅子の美術館、重村三雄の立体作品とその素材、という4つのテーマを「水紋」として紹介するコレクション展。コロナ禍で作品の貸し借りが困難になっている今日この頃、美術館の「コレクション」がどのように選ばれているか、またそれらの作品を「コレクション展」としてどのように構成するかという点に注目が集まっています。

紅白梅屏風と生きとし生けるもの展(川合玉堂美術館)
東京でも青梅市にある玉堂美術館は開館していました。空気が澄んでいたので周りに人がいないのを確かめ、マスクを外して深呼吸。草木と動物の作品が心に沁みました。

鏑木清方と鰭崎英朋 近代文学を彩る口絵(太田記念美術館)
明治後半から大正期にかけて、文芸雑誌や単行本に付けられた「口絵」コレクションの展覧会。彫りも摺りも精緻なれっきとした「新版画」でありながら、口絵という添え物的な位置づけから忘れられた存在になっていました。昨年、緊急事態で中断されてしまった展覧会の再開催です。


妖艶粋美──甦る天才絵師・鰭崎英朋の世界

2021年8月7日土曜日

4月に鑑賞した展覧会

8月になってしまいましたが、2021年4月に鑑賞した展覧会を振り返ります。終了間際の駆け込みになった「筆魂」以外の3展は、すべて4月末からの緊急事態宣言に伴い会期半ばで閉幕となってしまいました。どれも良い内容だったので残念(巡回しているものもあります)。

見に行く展覧会の優先順位、以前は会期末が近いものを優先していましたが、最近はもう「いま現在いちばん見たいものを見る」方式です。

筆魂(すみだ北斎美術館)
浮世絵の先駆である岩佐又兵衛から幕末まで、肉筆作品のみを展示。

渡辺省亭(東京藝術大学)
渡辺省亭という名前を最初に見たのは、数年前にあった明治の「超絶技巧」を紹介する展覧会で、七宝焼きの原画担当としてでした。今回「日本画家」として作品をまとめて拝見し、こんなにも幅広い画題を扱っていたのかと驚きました。

コンスタブル展(三菱一号館美術館)
英国の風景画といえばターナーが有名ですが、同時代に同じく風景画家として活躍したコンスタブルも気になっていました。空と雲の表現へのこだわりがすごい。印象派より前に「完全屋外制作」に挑んでいた方でもあります。

あやしい絵展(東京国立近代美術館)
タイトルだけ見るとキワモノっぽいですが、行ってみると全然違っていて、近代日本の精神世界をさぐるような内容だと思いました。




2021年8月1日日曜日

『日出処の天子』と『聖徳太子』その2

前々回は、聖徳太子1400年遠忌展がきっかけで、山岸凉子『日出処の天子』(以下『日出処』)を久しぶりに再読しましたよということを書きました。

前回は池田理代子版『聖徳太子』(以下『太子』)とその盗作疑惑について、時系列を整理してまとめました。


文庫はコンパクトだけど現在は入手困難…

今回は『太子』の内容について少し書いておこうと思います。とは言っても、こちらの方はKindle Unlimitedに入っていた1巻しか読んでないんですよね。

  聖徳太子(1) Kindle版

で、1巻だけを読んだ感想としては正直「似てない」と思いました。厩戸王子の髪形など、作画で確かに似ている部分はあるものの、肝心のストーリーが似ていない。これは当たり前の話で、『太子』は王子誕生の場面から始まっているので、1巻の前半は『日出処』が始まる前の話なのです。後半は日羅関連の話になりますが、これも話の展開は別物です。というか似ていたら仏教史的にえらいことになってしまうでしょう😓

「あ、同じ場面あったな」と思うところは1箇所ありました。王子が戸棚を開けると大量の書物が保管されていて、周囲の人がそれを見て驚く場面。でもこれ、前回リンクした検証サイトにはなかったので(私が見落としてるのでなければ)、何か共通の元ネタがあるのかもしれません。中公文庫『日本の歴史』の2巻には「七歳のとき百済献上の経論数百巻を読破した」という(後世の作り話くさい)逸話が紹介されていますが、似たような場面が『聖徳太子絵伝』とかにあってもおかしくない気がします。

その他「類似点」として挙げられている場面は、並べてみると確かに似ていると思いますが、ストーリーの流れの中の一場面としてはそれほど似ているという印象はありませんでした。ただ『太子』版の「飛んでくる矢を粉砕する」場面、あれは確かにそれまでの流れから浮いているというか、唐突な感じがあったのは確かです。

全巻を通して読めばまた違う印象があるかもしれませんが、正直あまり読む気になれません。だって<小声>面白くないし</小声>。

何というか「学習まんが」的なのですよ。というか四天王寺の依頼で描かれたということなので、実際に「学習まんが」なのでしょう。仏教伝来に関する説明の台詞は妙に饒舌ですが、話の流れが淡々としているというか物語世界に「引き込まれる」感覚がない。

子供の頃は『ベルばら』に夢中になりましたし、『女帝エカテリーナ』も面白かったので残念ですが、この話はここまでにしたいと思います。

後は秋にサントリー美術館で開催される「日出づる処の天子」展を見るだけ!緊急事態が今後どうなるか心配ですが、無事開催されることを祈りたいと思います。


映画「Black Box Diaries」をめぐる問題 その3:沖縄タイムスと神奈川新聞は「誤報」問題をどう報じたか

※以下の文章は、大部分を3月14日~17日ごろにかけて書いたものです。伊藤詩織氏が東京新聞の望月記者を名誉棄損で訴えた件は、3月18日に訴訟の取り下げが報じられました。 東京新聞の報道問題の続きです。東京新聞が記事を一部修正したことについては、伊藤氏側がその記事を根拠に望月記者を...