切手の話をしたら次は消印の話をしたくなりました。
最近出版された『風景印ミュージアム』を読んでいると、いろいろと風景印を集めたくなってしまうのです。ごちゃごちゃにしてファイルに突っ込んでいた切手とポスカも、ようやく整理できたし。
まず風景印って何なのかといいますと、絵入りの消印です。通常の黒い消印よりも大きく、現地の名所や名産品などがモチーフとして描かれたもので、郵便局に行くと押してもらえます。局によっては風景印がないこともありますが、全国の郵便局のうち、ほぼ半数にはあるらしい。郵便物に押してそのまま出すことも、押してもらった紙を持ち帰ってコレクションすることもできます。いずれにしても「消印」なので、ハガキまたは切手(ハガキ料金かそれ以上)に押してもらう必要があります。
図案にそれぞれにお国柄が出ているのが面白く、収集している郵趣家は大勢います。どの局にどういう印があるかという一覧も、書籍や電子データとして何種類か発行されています。株式会社鳴美の『風景印20xx』は2年に1度くらいのペースで改訂版が出ており、私は2016年のCD-ROM版を持っているので、基本的にはこれで調べ、2016年以降の新設や改変等を郵便局のサイトで検索しています(サイトには最近のデータしかないので、最初からここで調べるというわけにはいかないのです)。
で、思ったのですけど(ここからが本題)北斎の風景印ってないですよね。
広重は《東海道五十三次》や《金沢八景》シリーズからいくつか採用されています。でも北斎ってないんですよ!北斎といえば富士山を描いた連作《富嶽三十六景》が有名だし、富士山も風景印のモチーフとしてはポピュラーなので沢山あってもおかしくないのに。
上掲の『風景印2016』で検索してみましたが、北斎に関連する風景印は2つしか見つかりません。しかも片方はすでに廃止、もう片方は作品が何だかよくわからないんですよ!どういうことなのか、ちょっとご説明します。
最初に見つかったのは、都内にある墨田緑町郵便局。『風景印2016』から引用してみましょう。
説明には「江戸東京博物館と北斎通りを描く」とあり、江戸博の特徴的な建物と「北斎通り」の標識があります。そして文中にはありませんが、その下の橋は↓これですよね!?
《富嶽三十六景》シリーズの《御厩川岸より両國橋夕陽を見る》です。橋と舟の形がゆるやかに反転S字カーブを描く幾何学的な構図で有名な作品。橋の形も富士山の位置も同じなので間違いないと思います。上に載せた画像の切手は、消印でおわかりのとおり今年の国際文通週間のもの。やったぁ、風景印でもマキシマムカードが作れる!
……と思ったら、何とこの風景印、昨年の3月で廃止になっていました。ええぇぇぇ~。
検索してみたら、郵便局が移転するために一時閉鎖になっているらしく、2022年頃には再開予定とのこと。再開時にはこの風景印も復活するのでしょうか。してほしいです。
それにしても「北斎通り」の表記があるから見つけられましたが、これがなかったら両國橋の図には気づかなかったかもしれないですね。他にも説明なしで図が使われている例があるのかもしれません。
さて、北斎の作品が使用されている風景印、二つ目は滋賀県の草津郵便局です。
これがですね、解説は「北斎の軸物を描く」となっているのですが、何という作品なのかわからないのです。上掲の『風景印ミュージアム』でも最後の方にこの風景印への言及があり、詳しくは(ネタバレになるので)本を読んでいただくとして、結論だけ書くと作品が何なのかはわかりませんでした。謎です。
風景印の使用開始は昭和41年ですから、けっこう古いです。想像ですが、作成当時は「北斎が草津を描いた作品」と評価されていたが、その後持ち主が変わったりして現在は所在不明になり忘れられている。もしくは、その後の鑑定で贋作だったことがわかり黒歴史化――というような事情があったりしないでしょうか?
版画なら作品が何枚も残っているので比較的探しやすいのですが、軸物(掛け軸)なら肉筆の一点物でしょうから、探すのも難しそうです。そもそも「北斎の軸物」という説明自体が間違っていてまったく無関係なのかもしれません。作品がわからなければ同じ絵のポスカを合わせることもできないしなぁ……ということで、今のところ「風景印で北斎のマキシマムカードを作る」ことはできていません。国際文通週間のシリーズは今後も続くと思いますので、こちらは来年も作成したいと思います。
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