前回の記事で、「草津郵便局の風景印に使用されている『北斎の軸物』の正体が謎だという話を書きました。今回はその続きです。
北斎の作品であるという記述が正しいのであれば、北斎の作品を全部チェックしてみればわかるはずですよね。
昔なら図書館に通って分厚い画集をめくって探すところですが、最近は電子版で便利なものがあります。
北斎の作品を、修業時代から晩年まで、版本・錦絵・肉筆画などすべて網羅したシリーズです。全十巻ありますが、1巻100~500円なので全巻購入しました。しらみつぶしに見ていけばどこかに見つかるはず!
その結果。
……見つかりませんでした。
\(^o^)/オワタ
\( 'ω' )/オワタ
⌒/(。ω。)\⌒\(゚ω゚)/オワターーーーー
ええぇ、ここにもないってどういうことなんですか!!
もう一度印のデザインを見てみましょうか。
馬に乗った人と徒歩の人が3人。三度笠をかぶっているので旅人でしょうか。省略した描き方になっていますが、これは風景印デザイナーさんの腕のせいではなく、もとの「原画」がこのように描かれていたためと思われます。下半分の旧本陣は写実的に細かく描かれていますから。見ていて気になったのは、馬の描き方です。頭を下げ、前足は片方をぴんと伸ばしもう片方を折り曲げる。後ろ足は「く」の字で尻尾は「つ」の字に揺れる感じ。このポーズ、北斎はけっこう多用しています。お得意のポーズなのかもしれません。
風景印そのままではないけれど、似ている構図はいくつかありました。
『富嶽三十六景』《相州江嶌》のモブとか。
『北斎漫画』とか。
『画本早引』の「旅」は風景印の雰囲気にちょっと似てるかも。
しかし単なるモブや版本の一部を風景印に採用するということは、あまり考えられません。そして風景印というものの性質を考えると、草津に関連する作品のメインのモチーフであるはず!
……そう考えてみると、北斎が草津に住む知り合いか門人に送った手紙の「挿絵」もしくは直筆の「絵手本」ではないかという気がしてきました。手紙なら作品集に載っていなくてもおかしくないでしょう。
ただし、まったく無関係な図案がなぜか選ばれてしまった可能性や、記述が誤っている可能性もあるので、真相はやはり謎です。
「郵便屋さんからの手紙」というブログには、風景印のモチーフにまつわるさまざまな「謎解き」や調査過程が詳しく記されていて、とても面白いです。これを読んでいると、カタログにこう書かれているからといって信用できるとは限らないんだなということがよくわかります。
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